NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年4月18日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民謡
『Ubazakura』- 乳母桜
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
Hi, everyone.
It’s Friday.
Enjoy Simple English.
森崎ウィンです。
毎週金曜日にお送りするのは「Stories Lafcadio Hearn Collected around Japan、小泉八雲が愛した日本の民話」です。
今日お送りするのは「乳母桜」
乳母とは、母親に代わって、乳児にお乳を飲ませ、育てる女性のことを指します。
若くして病気にかかったお露のため、乳母のお袖は身代わりとなり、ある願いを人々に託します。
では、Let’s listen to the story together.
Ubazakura – 乳母桜
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
300年前、朝美村と呼ばれる村に / 伊予の国の、善良な男がいた / 徳兵衛という名の。
彼の村では、彼は最も裕福な男だった / そして / リーダーだった。
彼は幸運な男だった / 多くの点で、しかし / 彼は40歳で / 知らなかった / 父親になる幸せを。
彼と彼の妻は子供を欲しがった / 非常に、だから / 彼らは祈った / 熱心に / 偉大な不動明王に / 何度も。
ついに、彼らの祈りは聞かれた、そして / 夫婦は娘を持った。
その子はとても可愛いかった / そして / 名付けられた / 露と。
母親は作ることができなかった / 十分な母乳を / その子のために、そこで / 彼らは雇った / 乳母を。
彼女(乳母)の名はお袖だった。
お露は成長した / とても美しい少女に。
その後 / 15の歳に、彼女は病気になった / そして / 医者の全員が思った / 彼女は死ぬだろうと。
お袖はその少女を愛した / 実の母親の愛で、だから / 彼女(お袖)は祈りに行った / 不動明王に / 毎日 / 21日間。
そして / その期間(21日間)の終わりに、お露は突然回復した。
彼女(お露)は完全に良くなった。
大きな喜びだった / 徳兵衛の家は / そして / 彼(徳兵衛)は祝賀会を開いた。
しかし / その夜、お袖が突然病気になった。
翌朝、彼女は息絶えるとこだった。
家族は集まった / 彼女の周りに / さよならを言うために。
しかし / 彼女(お袖)は言った / 彼ら(家族)に、
「その時です / 私があなたがたに話すべき / あなたがたが知らないことを。
私の祈りは聞かれました。
私は願いました / 不動明王からの許可を / 死ぬという / お露の代わりに。
それゆえ、あなたがたは悲しんではいけません / 私の死について。
ですが / 私にはあります / 1つお願いが。
私は不動明王に約束しました / 私が桜の木を植えると / お寺に / 彼(不動明王)に感謝するために。
今、私はそれができません / 自分自身で。
どうか植えていただけませんか / 桜の木を/ 私のために？
さようなら / 私の親愛なる友人たち、そして / 覚えていてください / 私が幸せだったことを / お露のために死ぬことが。」
お袖の死後、最も立派な桜の木が / 徳兵衛が見つけることができた / 植えられた / 寺の庭に。
木は育ちに育った。
次の年、2月16日に、美しい花が咲いた / その木に。
それは同じ日だった / お袖が亡くなった / 前年に。
そして / 254年間、その桜の木は咲き続けた / そして / それ(桜が咲くこと)はいつもだった / 2月16日に。
その花はピンクと白だった、まるで母親の乳房のようだった / 赤ん坊に乳を与える(母親の乳房)。
そういうわけで / 人々はその木を呼んだ / 乳母桜と、乳母の桜の木(という意味で)。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
300年前、伊予の国、朝美村という村に、徳兵衛という善良な男がいた。
村で、徳兵衛は最も裕福な男であり村長だった。多くの点で幸運な男だったが、40歳で父親になる幸せを知らなかった。徳兵衛と妻は子供が欲しくて、偉大な不動明王に何度も熱心に祈った。
ついに、彼らの祈りが聞き届けられ、夫婦は娘をもうけた。その子はとても可愛らしく、露と名付けられた。
母親は、子供のための母乳を十分に作れなかった(乳の出が良くなかった)ので、夫婦は乳母を雇った。名をお袖といった。
お露はとても美しい少女に成長した。
それから十五の歳で病気になった。どの医者も思った、彼女は死ぬだろうと。
お袖は、実の母親の愛情でお露を愛していた、だから、お袖は不動明王に祈りに行った、21日間毎日。そしてその期間の終わりに(21日目)、お露は突然回復し、すっかり元気になった。
徳兵衛の家は大きな喜びで、徳兵衛は祝宴を開いた。
しかしその夜、お袖が突然病に倒れた。翌朝、彼女は危篤だった。家族は別れを告げるため、お袖の周りに集まった。
だが、お袖は家族に言った。
「皆さまが知らないことをお話しする時が来ました。私の祈りが聞き届けられました。私は、お露の身代わりとして死ぬ許しを、不動明王様に求めたのです。ですから、私の死を悲しまないでください。ですが、1つお願いがあります。私は不動明王様にお約束しました、お寺に桜の木を植えると、不動明王様への感謝として。今、自分でそれをすることができません。どうか私のために桜の木を植えていただけませんでしょうか。さようなら、親愛なる友人たち。そして、お露のために死んだことは私の幸せだった、と覚えていてください。」
お袖の死後、徳兵衛が見つけた最も立派な桜の木が、寺の庭に植えられた。木は成長し続けた。次の年、二月十六日に美しい花が咲いた。それは、前の年にお袖が亡くなった日と同じ日だった。
そして254年間、その桜の木は咲き続けた。花が咲くのはいつも二月十六日だった。
その花は、赤ん坊に乳を与える母親の乳房のようにピンクと白だった。そのため、人々はその木を、乳母の桜の木、乳母桜と呼んだ。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
愛の力は偉大ですね。
お露の身代わりになれるように、不動明王に許しを求めたんですね。
物語の中でも言ってますね。
I asked for permission from Fudo Myo O to die in place of O-Tsuyu.
この、”asked for permission” 「許しを求めた」
そして “in place of”「代わりに」
つまり「身代わりに」ってことですよねぇ。
いや～、素敵！
See you next Monday!
参考リンク：大宝寺の乳母桜
今回の物語は、愛媛県松山市の大宝寺（四国霊場第四十四番札所）で伝わる伝説です。自治体のリンクだけ置いておきます。
早く開花する品種の桜だそうです。
大宝寺の乳母桜は有名ですので、検索するとたくさん写真が見つかります。
