NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年9月4日(木)放送分
哲学者からの答え
『I Don’t Want to Speak to My Friend』
友達と話をしたくない
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
Enjoy Simple English.
森崎ウィンです。
毎週木曜日にお送りするのは「哲学者からの答え」
今日の悩みは「友達と話をしたくない」です。
自分の悪口を言っていた友達が、ある日、謝りたいと言ってきました。
しかし、友達への怒りが抑えきれず、話したくないという小学生。
そんな彼に、ハンナ・アーレントの哲学をシェアします。
彼女は、”forgive” 「許す」ことの重要性を説きました。
ストーリーに出てくる、
“individual” は「個人」という意味です。
それでは、Let’s 哲学!
I Don’t Want to Speak to My Friend – 友達と話をしたくない
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
Tom:
こんにちは、皆さん!
トムと小林昌平の…
Shohei:
『哲学者からの答え』です!
今日、私たちはメッセージが / 10歳の少年、アユムから。
Ayumu:
こんにちは、僕は問題があります / 友達について。
僕のクラスメイトと僕は / ドッジボールをします / 僕たちのお昼休みの間。
でも / 先日、僕はわかりました / 僕の友達が言っていたことを / 僕の責任だと / 僕たちがいつも負けるのは。
僕はあまりに腹が立ったので / 僕は叫びたくなりました!
(構文:so ~ that ~)
数日後、彼は言いました / 彼は悪かったと感じている / そして / 話したいと。
(間接話法、that以下は時制の一致)
僕は分かっています / 僕は話すべきだと / 彼と、でも / 僕はまだ怒っています。
何を僕はすべきですか?
Tom:
それはお気の毒です / そのことを聞いて。
私は分かります / 人々が傷つける時 / あなたの感情を / ひどく、あなたは感じます / あなたは会いたくないと / 彼らに / 二度と。
昌平、どうすれば私たちは助けられますか / 彼を?
Shohei:
えっと、私はアドバイスがあります / ある哲学者からの / 20世紀の。
彼女の名前はハンナ・アーレントです。
Tom:
何を彼女は言っていますか?
Shohei:
彼女は言っています / 私たちは許す必要があると。
Tom:
時々 / それが最も難しいことです / 行うべき。
Shohei:
そうです。
アーレントは言いました / 人々の行動は / より重要であると / 思考よりも。
それは新しい取り組みでした。
Tom:
どのようなタイプの行動ですか?
Shohei:
それは / あなたが言うこと / そして / あなたがすること / についてです。
この創造的な側面が / 私たちを人間らしくさせます。
Tom:
その通りです。
Shohei:
あのー、アーレントはアメリカへ行きました / ナチスから逃げるために / ドイツの。
彼女は見ました / 彼ら(ナチス)が制限しているのを / 個人の思考と言論の自由を。
彼女は完全に反対でした / これに。
Tom:
私は想像することができません / 言うことができないことを / 私が思うことを。
行動は重要です!
Shohei:
はい、しかし / 他方では、行動には2つの弱点があります。
Tom:
弱点?
Shohei:
はい。
行動は行われます / 人々の間で、だから / あなたは知ることができません / 何が起こるかを。
1つ目のリスクは / あなたが完全にコントロールできないことです / 結果を。
2つ目のリスクは / あなたが取り消すことができないことです / 行動を。
Tom:
取り消す?
Shohei:
それは意味します / 私たちが変えることができないと / 過去を。
アユムの友達は過去に戻ることができません / そして / 取り消すことができません / 彼が言ったことを。
Tom:
それでは / 何の行動を / アユムは取れますか?
Shohei:
許す。
Tom:
ああ。
Shohei:
もしアユムが話さなければ / 彼の友達と、その友達は試みるかもしれない / 復讐することを。
復讐はもたらすだけです / さらなる復讐を。
それは / 終わりのないサイクルのようです。
しかしながら、私たちは止めることができます / それ(復讐)を / 許しをもって。
Tom:
私は分かります / しかし / 許すことはとても難しいです。
Shohei:
自然です / 復讐を望むことは。
それ(許し)は難しかった / アーレントにとっても。
Tom:
しかし、私は思います / 私たちは試さなければならないと。
Shohei:
はい。
論理的であってください、そして / 感情的ではいないでください。
考えてください / 許すための方法について。
もしあなたがしなければ(考えなければ)、あなたは持つことさえない / 機会を / 新しい始まりの。
Tom:
アユム、私たちは見つけました / 君の答えを!
重要です / 方法を見つけることが / 君の友達を許すための。
Shohei:
あなたが許す時、あなたは止めています / よくないサイクルを / そして / 機会を得る / 新しい関係を築くための。
Tom:
幸運を祈ります / そして / また来週会いましょう!
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
Tom:
皆さん、こんにちは!
トムと小林昌平がお送りするのは…
Shohei:
『哲学者からの答え』です!
今日は、10歳の少年、アユムくんからのメッセージです。
Ayumu:
こんにちは、僕は友達との間に問題があります。
クラスメイトと僕は、お昼休みにドッジボールをします。
でも先日、友達が言っているのがわかりました、自分たちがいつも負けるのは僕のせいだと。
僕はすごく腹が立ったので、叫びたかったです!
数日後、友達が、悪いと思ってるから話したい、と言いました。
彼と話すべきだと分かっていますが、僕はまだ怒っています。
僕はどうすればいいですか?
Tom:
それは大変でしたね。
わかります、人は感情をひどく傷つけられると、二度と会いたくないみたいな気持ちになりますね。
昌平、どうすれば彼を助けられますか?
Shohei:
えっと、20世紀のある哲学者からのアドバイスがあります。
彼女の名は、ハンナ・アーレントです。
Tom:
彼女は何と言っているのでしょうか?
Shohei:
私たちは許す必要がある、と言っています。
Tom:
時々、それは、行うのに一番難しいことです。
Shohei:
そうです。
アーレントは言いました、人々の「行動」は「思考」よりも重要だと。
それは新しい取り組みでした。
Tom:
どのようなタイプの「行動」ですか?
Shohei:
それは、あなたが言うことと、あなたがすることについてです。
この創造的な側面が、私たちを人間らしくしています。
Tom:
その通りですね。
Shohei:
あのー、アーレントは、ドイツのナチスから逃げるため、アメリカへ行きました。
彼女は、ナチスが個人の思考や言論の自由を制限しているのを見ました。
彼女は、これに完全に反対していました。
Tom:
自分の思ったことを言えないのは、想像できません。
「行動」は大事ですね!
Shohei:
はい、ですが一方、「行動」には2つの弱点があります。
Tom:
弱点ですか?
Shohei:
はい。
「行動」は人々の間で行われるため、何が起こるか知ることはできません。
1つ目のリスクは、結果を完全にコントロールできないこと。(不可予言性)
2つ目のリスクは、行動を「取り消す」ことができないことです。(不可逆性)
Tom:
「取り消す」とは?
Shohei:
私たちは過去を変えることができない、という意味です。
アユムくんの友達は、過去に戻ることも、言ったことを取り消すこともできません。
Tom:
では、アユムくんは、どんな「行動」を取ることができるのでしょうか??
Shohei:
「許す」です。
Tom:
ああ。
Shohei:
もしアユムくんが友達と話さなければ、その友達は復讐しようとするかもしれません。
復讐はさらなる復讐をもたらすだけです。
それは終わりのない連鎖のようなものです。
しかし、私たちは「許し」によって「復讐」を止めることができます。
Tom:
分かりますが、許すのはとても難しいです。
Shohei:
復讐をしたくなるのは自然です。
「許し」は、アーレントにとっても難しかったのです。
Tom:
でも、やってみなければならないのでしょうね。
Shohei:
はい。
論理的でいてください、感情的にはならないでください。
許す方法について考えてください。
そうしなければ、新しい始まりの機会さえ持てません。
Tom:
アユムくん、君の答えが見つかりましたよ!
友達を許す方法を見つけることが、大切です。
Shohei:
君が許す時、君は負の連鎖を止めているんだ、そして、新しい関係を築くチャンスを得ます。
Tom:
がんばってください。
また来週お会いしましょう!
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
許すことってとっても難しいと感じることもありますよね。
でもね、僕はこの話を聞いて、一歩引いて客観的に見たら、このネガティブなサイクルを止められると思えば、許すことにすごく意味があるなって思いました。
See you tomorrow!
参考リンク
先日の9月1日、読売新聞に森崎ウィンさんのインタビュー記事が掲載されました。
ご本人の意図とは異なるかもしれませんが、今日のエンディングトークを聞き、私の中で、この記事と強く結びつきましたので、ご紹介させてください。
インタビュー記事はこちらです。
そして、森崎ウィンさんがご自身の言葉でお話されているインタビュー動画はこちらです。
参考図書
2025年度前期(4月~9月)木曜日のテーマ「哲学者からの答え」は、下記の本を参考に英文が執筆されています。
著者:小林昌平さん (哲学者)
『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』