NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年7月11日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民話
『Common Sense』- 常識 (後編)
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
It’s Friday!
Enjoy Simple English
森崎ウィンです。
毎週金曜日は「小泉八雲が愛した日本の民話」です。
今月からは、作品集「骨董」の中から、ストーリーを2週に分けて紹介していきます。
今日は「常識」の後編です。
普賢菩薩がお寺に現れるから一緒に見ないか、と誘われたひとりの猟師。
本当にそうなのか疑いながらも、一緒に和尚さんと待つことになりました。
さて、どうなるのでしょうか。
ストーリーの中の、
“tusk” は「牙」
そして、”prove” は「証明する」のことですよ。
Let’s listen.
Common Sense – 常識 (後編)
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
一人の僧侶と / 一人の少年と / 一人の猟師が / 待っていた / 奇跡を / その僧侶が / 見たことのある / 何度か / 以前に。
すると / 暗く風の強い夜空に、白い光が / 現れた / そして / 来た / どんどん近くに。
その光は / 徐々になった / 形に / 何かとても特別なものの / 乗っている / 雪のように白い象に / 六本の牙を持つ。
まもなく、その象とその輝く乗り手は / 到着した / 寺の前に。
その幻は立った / そこに / まるで月光の山のように。
それ(幻)は素晴らしくて奇妙の両方だった。
普賢菩薩が到着した。
そして / 僧侶と少年は / お辞儀をした / そして / 唱え始めた / 仏教の言葉を / 普賢菩薩に。
しかし / 突然 / 猟師が立ち上がった / 弓矢を持って / 彼の手に。
彼(猟師)は後ろへ引いた / 矢を / できるだけ遠く / そして / それ(矢)を放った / 真っすぐに / その光に向かって。
すぐに、音と一緒に / 雷のような、その白い光とその形は / 消えた。
何もなかった / 風の強い暗闇以外は。
僧侶は叫んだ、
「何をあなたはした?
あなたは正気を失ったのか?」
猟師は答えた / 穏やかに。
「僧侶様、どうか落ち着いてください / そして / 聞いてください / 私(の話)を。
あなたは思った / 普賢菩薩が来たと / あなたの所へ / なぜなら / あなたが瞑想をした / そして / 聖なる言葉を言ったから。
もしそれが本当なら / それなら / 普賢菩薩は現れたでしょう / あなただけに。
彼(普賢菩薩)は来なかったでしょう / 私または少年のところに。
私は猟師です / そして / 私の仕事は殺すことです / 動物や鳥を。
仏は言います / 正しくないと / 殺すことは。」
猟師はまた言った、
「私は教わりました / 仏はどこにでもいると、しかし / 私たちは見ることができません / それら(仏)を / なぜなら / 私たちは愚かです / そして / 完璧ではないからです。
あなたは賢い僧侶です、だから / あなたは見たかもしれません / 普賢菩薩を。
しかし / 猟師が / 私のような / できるはずがない / 彼(普賢菩薩)を見ることが。
あれは普賢菩薩ではありませんでした。
信じてください / 私を。
それ(幻)は悪い不思議な生き物でした / だまそうとしている / あなたを。
おそらく / それ(悪い生き物)は破滅しようとしていた / あなたを。
私はあなたに頼みます / 抑えることを / あなたの感情を / 朝まで。
そうすれば / 私が証明します / あなたに / 私が話しているということを / 真実を。」
日の出ともに、猟師と僧侶は / 見た / その場所を / 光が現れた(場所)。
彼らは発見した / ある量の血を。
彼らは追った / その血を / そして / 見つけた / 死体を / 大きなたぬきの / 矢がある / その胸に。
僧侶は賢い人だったが / 仏を信じた、彼は簡単にだまされた / たぬきに。
猟師は利口ではなかった / 僧侶と同じほどには。
彼(猟師)は信じなかった / 仏を / それほど、しかし / 彼にはあった / ある才能が。
彼にはあった / 優れた才能が / 常識の。
彼は使うことができた / それ(常識)を / 認識し克服するために / 危険な状況を。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
一人の僧侶と一人の少年と一人の猟師が、僧侶が以前も何度か見た奇跡を待っていた。すると、暗く風の強い夜空に、白い光が現れ、どんどん近づいてきた。
光はだんだんと、六本の牙を持つ、雪のように白い象に乗る何か特別なものの形になっていった。まもなく、その象と輝く乗り手は寺の前に到着した。その幻は、まるで月光の山のようそこに立った。それは、素晴らしくもあり、奇妙でもあった。普賢菩薩がお着きになられた。すると僧侶と少年はお辞儀をし、普賢菩薩へ読経を始めた。
しかし突然、猟師が手に弓矢を持って立ち上がった。矢をできるだけ後ろへ引き、その光に向け真っすぐに放った。すぐに雷のような音とともに、白い光と形は消えた。
風の強い暗闇以外、何もなかった。
僧侶は叫んだ。
「何ということをした?正気を失ったのか?」
猟師は穏やかに答えた。
「僧侶様、どうか落ち着いて私の話を聞いてください。あなたは普賢菩薩がご自分のもとへ来たとお思いになられた、瞑想をし読経をしたから。もしそれが本当なら、普賢菩薩はあなたにだけ現れたことでしょう。私や少年のところには来なかったでしょう。私は猟師で、仕事は動物や鳥を殺すことです。仏様は、殺生は正しくないと言っています。」
また猟師はこうも言った。
「仏様はどこにでもいると教わりました、ですが、私たちは愚かで未熟なため、仏様を見ることはできません。あなたは賢い僧侶ですから、普賢菩薩を見たのかもしれません。でも私のような猟師に、普賢菩薩が見えるはずありません。あれは普賢菩薩ではありませんでした。私を信じてください。あの光は、あなたをだまそうとする悪い化け物でした。あなたを滅ぼそうとしていたのかもしれません。僧侶様にお願いです、朝まで感情を抑えてください。そうすれば、私が真実をお話ししていることを証明します。」
日の出とともに、猟師と僧侶は光が現れた場所を見た。ふたりは血痕を発見した。その血をたどり、胸に矢が刺さった大きなたぬきの死体を見つけた。
僧侶は仏を信じた賢い人だったが、たぬきに簡単にだまされた。
猟師は、僧侶ほど利口ではなかったし、仏をそれほど信じてはいなかった。だが、彼にはある才能があった。常識という優れた才能だった。彼は、危険な状況を認識し克服するために、その常識という才能を使うことができた。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
登場したのは、普賢菩薩ではなく、たぬきだったんかーーーーーい!
小泉八雲の書籍
エンジョイ・シンプル・イングリッシュで取り上げられた物語が、収録されている書籍です。
- 日本語版:小泉八雲(著)
- 英語版:Lafcadio Hearn(著)