NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年5月30日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民話
『Jikininki』- 食人鬼
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
It’s Friday.
How’s your day going?
エンジョイ・シンプル・イングリッシュの森崎ウィンです。
毎週金曜日は「小泉八雲が愛した日本の民話」です。
今日の怪談は「Jikininki」
漢字で、「食べる・人・鬼」と書きます。
タイトルからして怖いですね。
ストーリーの中の、
“hut” は「小屋」、
“funeral” は「お葬式」の意味です。
それでは早速、聞いてみましょう。
Jikininki – 食人鬼
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
かつて、僧侶が / 夢窓国師と呼ばれる / 道に迷った / 山の中で / 美濃国の。
すると / 突然 / 丘の頂上で、彼は見つけた / 小さな小屋を / 特別に作られた / 僧侶たちのために。
とても老いた僧侶がいた / そこに。
「ここに泊まってもよろしいですか / あなたと一緒に / 今晩?」
夢窓は尋ねた。
しかし / その老人は断った / そして / 近くの村への行き方を彼に教えた。
夢窓は到着した / 村長の家に / そして / 温かく歓迎された。
彼は与えられた / 食事と寝床を。
真夜中少し前、大きな音が / 人々が泣いている / 夢窓を起こした。
それから、若い男が部屋に入ってきた / そして / 言った、
「僧侶様、私の父が亡くなりました。
ある習慣があります / 私たちの村には。
人が死んだ時は、誰も残ることができません / 村に / その夜の間。
言われています / 奇妙なことがいつも起こると。」
夢窓は答えた、
「私は僧侶です、だから / 私は留まります / あなたの父の遺体と共に / そして / 彼のために祈ります。」
「ありがとうございます、僧侶様。
もしあなたが聞いたり見たりした場合 / 何か奇妙なことを、どうか私たちに教えてください / 私たちが戻った時に / 明日の朝。」
皆が村を去った / そして / 僧は行った / 部屋へ / 遺体が置かれていた(部屋)。
夢窓は祈りの言葉を言った / そして / 葬儀を行った。
夜の静けさが / 最も深い状態の時、ある「形」が音もたてずに入った / 部屋に。
夢窓はできなかった / 動くことや話すことが。
その「形」は死体を食べた / 猫がネズミを食べるように。
そして / その後 / その「形」は去った / 同じくらい不可解に / それ(shape)が来た時と。
次の朝、全ての村人たちが戻った / そして / 誰も驚かなかった / 見て / 死体がなくなっているのを。
夢窓は彼らに話した / 暗く恐ろしい「形」について / 死体を食べた(shape)。
若い男は言った、
「それは同じです / とても古い物語と / 私たち全員が聞いたことのある / 以前。」
夢窓は尋ねた、
「丘の頂上の僧侶は / 葬儀を行わないのですか?」
村人たちはお互いを見た / 驚いて。
「僧侶はいません / ここに / 何世代の間。」
夢窓は小屋に戻った、そして / 老いた僧侶が話し始めた。
「私はとても恥ずかしい。
私は恥ずかしい / あなたが見たことが / 私を / 私の本当の姿で。
私は死体を食べました / 昨夜。
私は「食人鬼」妖怪 / です / 人々を食べる。
昔々、私は僧侶でした / この地域で。
しかし / 私はただ私の仕事をしただけでした / 服と食事のために。
だから / 私が死んだ直後、私は生まれ変わりました / 食人鬼として。
それ以来、誰かが死ぬたび、私は食べなければなりません / 死体を。
どうか助けてください / 私が逃れられるように / 私の恐ろしい状況から。」
老いた僧侶が言ってすぐに / これらの言葉を、彼と小屋の両方が消えた。
夢窓はわかった / 自分が一人だと / 背の高い草の中に。
彼は膝をついていた / 五つの石の塔のそばに / 僧侶の古い時代の墓であるような。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
かつて、夢窓国師という僧侶が、美濃国の山中で道に迷った。すると突然、丘の頂上に、僧侶たちのために特別に建てられた小さな小屋を見つけた。かなり老いた僧がそこにいた。
「今晩、ここに泊めていただけませんか?」と夢窓は頼んだ。
だが、老人は断り、近くの村への行き方を夢窓に教えた。
夢窓は、村長の家に着き、温かく歓迎され、食事と寝床を与えられた。
真夜中の少し前、人々が泣く大きな声で、夢窓は目を覚ました。すると、一人の若い男が部屋に入ってきて言った。
「僧侶様、私の父が亡くなりました。私たちの村には、ある慣習があります。人が死ぬと、その夜の間は、誰も村に残ることができません。いつも奇妙なことが起こると言われております。」
夢窓は答えた。
「私は僧侶です。ですから、お父上のご遺体のそばにいて、祈ります。」
「ありがとうございます、僧侶様。もし何か奇妙なことを聞いたり見たりなさったら、明朝、私たちが戻った時に教えてください。」
皆が村を去り、夢想は遺体が置かれた部屋へ行った。お経を唱え、葬儀を行った。
夜の静寂が最も深まった頃、ある「形」が音も立てず部屋に入ってきた。夢窓は動くことも話すこともできなかった。その「形」は遺体を食べた、まるで猫が鼠を食べるように。それからその影は、来た時と同じように不可解に去った。
翌朝、村人たちが戻った。そして誰も、遺体がなくなっているのを見て驚かなかった。
夢窓は村人らに話した、遺体を食べた暗く恐ろしい影について。
若い男が言った。
「それは、私たち全員が以前聞いていた、とても古い話と同じです。」
夢窓は尋ねた。
「丘の上にいる僧侶が葬儀をしないのですか?」
村人たちは驚いて互いを見た。
「何世代にもわたり、ここに僧侶はおりません。」
夢窓はあの小屋に戻った、すると老僧は話し始めた。
「私はとても恥ずかしい。あなたに私の本当の姿を見られ恥ずかしい。昨夜、私はあの死体を食べました。私は人を食べる「食人鬼」です。遠い昔、私はこの地域の僧侶でした。ですが私は、衣食のために、自分の務めをしていただけでした。だから私は死んだ直後、食人鬼として生まれ変わりました。それ以来、誰かが死ぬたび、私は死体を食べなければなりません。どうか、この恐ろしい状況から逃れられるよう、お力をお貸しください。」
老僧がこれらを言うとすぐ、彼も小屋も両方、消えた。
夢窓は、背の高い草の中にひとりでいることに気づいた。彼は膝をついていた、古い時代の僧侶の墓のような五輪石のそばで。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
怖い話でしたね。
そもそも食人鬼は、その土地のお坊さんだったんですね。
それでは、Have a great weekend!