NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年6月6日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民話
『A Dead Secret』- 葬られた秘密
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
Hi, everyone.
It’s Friday!
Enjoy Simple English の森崎ウィンです。
毎週金曜日は、小泉八雲の作品をお送りしています。
今週は「A Dead Secret、葬られた秘密」です。
亡くなった女性が、毎晩のように自分の箪笥の前に立つのですが、そこには深ーい訳がありました。
“figure” は「人影」
“mother-in-law” は「義理のお母さん」
“nod” は「うなずく」という意味です。
それでは、Let’s listen to the story together.
A Dead Secret – 葬られた秘密
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
昔 / 丹波の国に、裕福な商人が住んでいた / 美しく賢い娘と一緒に / お園という名の。
彼女は京都へ送られた / 良い教育を受けるために。
彼女が家に戻ると、彼女は結婚した / そして / 子供をひとり持った。
夫婦は暮らした / 幸せに / 四年近く / お園が病気になり / そして / 死ぬまで。
彼女の葬儀の夜に、彼女の幼い息子が言った / 彼のお母さんが帰ってきたと。
家族の何人かが / 二階へ上がった / お園の部屋へ / そして / 驚いた / 人影を見て / 死んだ母親の。
彼女は立っていた / 彼女の箪笥(タンス)の前に。
彼女の頭と肩は見えた / とてもはっきりと、しかし / その姿は消えているようだった / 腰から下が。
彼ら(家族)は恐ろしくなった。
お園の夫の母親が言った、
「おそらく / お園は戻ってきた / 彼女の物を見るために。
多くの死者がする / それ(自分の物を見るために戻る)を。
私は持っていきます/ 彼女の持ち物を / 寺へ、そうすれば / 彼女の魂は安らかになるでしょう。」
お園の持ち物のすべてが / 持っていかれた / 寺へ。
しかし / その人影は戻ってきた / 次の夜に / そして毎晩。
お園の義母は話した / 住職に。
彼(住職)は言った、
「何かがあるに違いありません / 彼女が気にしている(何かが) / 箪笥の中に。
今夜、私が必ず行きます / あなたの家へ / そして / 見ます / 何がなされるのが可能か。」
日没後、僧侶は行った / その家へ / そして / 部屋にいた / 一人で。
子の刻に、お園の姿が / 突然現れた。
彼女の顔は悲しそうに見えた / そして / 彼女の目はじっと動かなかった / 箪笥に。
僧侶は言った / 神聖な言葉を / そしてそれから / 大声で呼びかけた / その人影に。
「私は来ました / あなたを助けるために。
何かありますか / 箪笥の中に / あなたを心配させる(何かが)?」
その影はうなずいた / そこで / 僧侶は開けた / すべての引き出しを、しかし / それら(引き出し)は空だった。
彼(僧侶)は見つけなかった / 何も。
その人影はまだ見ていた / 箪笥を / 悲しそうに。
「何を彼女は望んでいるのか?」
僧侶は思った。
大きな一枚の紙があった / 覆っている / それぞれの引き出しの底を。
彼(僧侶)は取り除いた / 紙を / 一枚一枚 / 一番下の引き出しで、彼(僧侶)が見つけるまで / 一通の手紙を。
「これが / 悩ませていたものですか / あなたを?」
その女の影が / 彼(僧侶)の方を向いた / そして / その手紙を見た。
僧侶は尋ねた、
「あなたのためにそれ(手紙)を燃やしましょうか?」
彼女はお辞儀をした / そして / 僧侶は約束した / 彼女に、
「私は燃やします / それ(手紙)を / 寺で / まさにこの朝。
誰も読みません / それ(手紙)を / 私以外は。」
その人影は微笑んだ / そして / 消えた。
ほとんど夜明けだった / 僧侶が言った時 / 心配している家族へ、
「心配しないでください。
彼女は現れません / 再び。」
そして / 彼女は決してなかった(現れなかった)。
その手紙は燃やされた。
それは恋文だった / お園へ書かれた / 彼女の日々に / 京都での。
しかし / 僧侶だけが知った / 何があったか / それ(手紙)の中に、そして / その秘密は死んだ / 彼(僧侶)と共に。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
昔、丹波の国に、裕福な商人がいた。お園という美しく賢い娘と一緒に暮らしていた。
お園は、良い教育を受けるために京都へ送られた。お園は実家に戻ると、結婚し、子供をひとりもうけた。夫婦は四年近く幸せに暮らした、お園が病に倒れ亡くなるまで。
葬儀の夜、お園の幼い息子が言った、お母さんが帰ってきたと。
家族の何人かが二階のお園の部屋へ行き驚いた、死んだ母親の人影を見たのだ。
彼女は箪笥の前に立っていた。頭と肩はとてもはっきりと見えたが、その姿は腰から下が消えているようだった。
家族は恐ろしくなった。お園の夫の母親が言った、
「お園はおそらく自分の物を見に戻ってきたのでしょう。多くの死者がそうします。私が彼女の持ち物をお寺に持って行きます、そうすれば、彼女の魂は安らかになるでしょう。」
お園の持ち物はすべて、寺へ運ばれた。だが次の夜に、あの人影は戻ってきた、それから毎晩。
お園の義母は住職と話をした。住職は言った、
「箪笥の中に彼女が気にかけている何かがきっとあるのでしょう。今夜必ず、私がお宅へ伺い、何ができるか見てみましょう。」
日没後、住職はその家へ行き、ひとりで部屋にいた。子の刻(深夜0時)、お園の姿が突然現れた。彼女の顔は悲しげで、その目は箪笥を見つめていた。
住職は経を唱え、それからその人影に大声で呼びかけた。
「あなたを助けるために来ました。箪笥の中に、気がかりなものがありますか?」
その影がうなずいたので、住職はすべての引き出しを開けた、だが引き出しは空だった。何も見つからなかった。
その人影はまだ、悲しげに箪笥を見ていた。
「彼女は何を望んでいるのだろう?」住職は思った。
それぞれの引き出しの底には大きな紙が敷かれていた。住職はその紙を一枚ずつ取り除いた、一番下の引き出しまで。
住職は一通の手紙を見つけた。
「これがあなたを悩ませていたものですか?」
その女の人影は住職の方を向き、手紙を見た。
住職は尋ねた、
「あなたのために手紙を燃やしましょうか?」
お園はお辞儀をした。住職は彼女に約束した、
「まさにこの朝、寺で手紙を燃やします。私以外、誰も読みません。」
その人影は微笑み、そして消えた。
心配している家族へ住職が話した時、もう夜明けだった。
「ご心配なく。彼女は二度と現れません。」
そして、彼女は決して現れなかった。
その手紙は燃やされた。それはお園宛ての恋文だった、彼女が京都にいた頃の。
だが、住職だけが、何が書かれていたかを知っていて、その秘密は住職と共に葬られた。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
気になる~ぅ!
あのー、恋文の、手紙の中身、気になるの僕だけですか?
その中身がですね、和尚さんが亡くなると同時に葬られたということですねぇ。
ちなみに、”Hour of the Rat” は「子の刻」のことですよ。
See you next Monday!