NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年8月5日(火)放送分
オリジナル・ショート・ストーリー
『Rescued Books』- 本の疎開
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、直訳寄りにしております。
- 巻末のword listの訳を使用しています
- 英語の語順になるべく沿わせています
- 意訳は私なりの解釈です
- 極端に意訳した部分は直訳文も記載しました
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
Enjoy Simple English.
森崎ウィンです。
毎週火曜日は、オリジナルのショートストーリーをお届けします。
今日は「Rescued Books、本の疎開」です。
夏休み、ひいおじいちゃんの家を訪ねたユズルくん。
そこで、ひいおじいちゃんから、戦争中に体験したある話を聞きます。
ストーリーに出てくる、
“bomb” は「爆撃する」
“burn to the ground” は「焼け落ちる」という意味です。
では早速、聞いてみましょう。
Rescued Books – 本の疎開
月曜と火曜は、直訳と意訳の間ぐらいの和訳1パターンです。
Yuzuru:
こんにちは、ひいおじいちゃん!来たよ!
Great-Grandfather:
さあ、夏が来たと感じるな、お前がここにいると。
Yuzuru:
僕も同じだよ。
ところで、僕、ひいおじいちゃんの部屋が大好きなんだ。
本がすごくたくさんある!
聞いたことなかったけど、本を何冊持ってるの?
Great-Grandfather:
本を数えたことがないな。全部で約3,000冊だと思う。
Yuzuru:
3,000冊も持ってるの?
僕、本当にひいおじいちゃんのひ孫かな?
Great-Grandfather:
それはどういう意味だ?
Yuzuru:
僕、本を読むのが苦手なんだ。
夏休みの宿題で、本を読んでレポートを書かないといけないんだけど(読書感想文)、どの本を読むべきかわからなくて。
Great-Grandfather:
ああ、お前は絶対に私のひ孫だ!
Yuzuru:
え?
Great-Grandfather:
私も本が好きじゃなかったよ、お前の年の頃は。
本を読み終えたことはなかったさ。
Yuzuru:
本当?
それなら、どうして今はそんなにたくさんの本に囲まれているの?
Great-Grandfather:
知っているだろ?1940年代に日本が戦争だったのは。
Yuzuru:
もちろん、第二次世界大戦。
Great-Grandfather:
そうだ。
東京は爆撃され、家や建物は焼け落ちた。
本当に大変な時代だった。
その時、私は中学生だった。
ある日、言われたんだ、本を持っていくようにって、日比谷の図書館から田舎に。
Yuzuru:
本を持っていく?
Great-Grandfather:
荷車やリュックサックに入れた本を運んだんだ、奥多摩や埼玉県の志木市へ。
何日も何日もかかったよ。
Yuzuru:
遠かったの?
Great-Grandfather:
約50km離れてたと思うな。
Yuzuru:
それは遠いね!
一日で行って帰れないよ。
Great-Grandfather:
夜通し歩いたさ、そこに着くために。
Yuzuru:
その時、本を読み始めたの?
Great-Grandfather:
他にやることがなかったんだ、休憩時間中に。
それで、あることを見つけたんだ。
Yuzuru:
何を見つけたの?
Great-Grandfather:
それは、希望があるってことだ、たくさんの本の中に。
Yuzuru:
希望?
Great-Grandfather:
人は本を読むと、前向きに考え始める。
友人たちと私は考えたよ、戦争が終わった時に食べたい食べ物やお菓子について。
あるいは、本で読んだ場所へ旅行することについて考えた。
結婚して家族と人生を楽しむことについて考えた。
読書が、私たちに希望を与えたんだ。
Yuzuru:
だから、大人は、ひいおじいちゃん達に、本を安全な場所へ持って行かせたのかもしれないね。
戦争後、僕たちに本を持たせたくて。
Great-Grandfather:
その通りさ。
私たちは約40万冊の本を救うことができた。
そして、5月、その図書館は爆弾で破壊された。
Yuzuru:
ええ、そんな!
Great-Grandfather:
運び出すことができなかったとてもたくさんの本があった。
そして、そのすべてが燃えた。
Yuzuru:
だから、今、こんなにたくさんの本を持っているの?
Great-Grandfather:
かもしれんな。自分でもわからんが。
Yuzuru:
ひいおじいちゃん、お気に入りの本は何?
Great-Grandfather:
なぜだ?
Yuzuru:
ひいおじいちゃんの話を聞いて、本が読みたくなった。
(直訳:ひいおじいちゃんが、僕に本を読ませたくさせた。)
Great-Grandfather:
ここの本は、全部お気に入りさ。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
Books give us hope.
本は私たちに希望をくれた。
これはいつの時代でも言えることですね。
この話は実際にあった話で、日比谷図書館から40万冊がですね、奥多摩などの蔵に運ばれたそうなんです。
おかげで、大切な本たちが守られました。
感慨深いですね。
See you tomorrow.
参考リンク
東京都立日比谷図書館に関する、読売新聞の記事です。