NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年9月5日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民話
『Story of a Pheasant』
雉子のはなし (前編)
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
It’s Friday!
Enjoy Simple English の森崎ウィンです。
毎週金曜日にお送りするのは「Stories Lafcadio Hearn Collected around Japan」
今日は「雉のはなし」の前編です。
ある日、とある農夫の妻は夢を見ました。
その夢の中に、亡くなった義理の父が現れ「私を助けてくれ」と言いました。
タイトルの「雉」”pheasant” とどう関係があるのでしょうか。
ストーリーに出てくる、
“weave” は「機を織る」
“lid” は「蓋」
“blind” は「目が見えない」のことです。
では、Let’s listen to the story together.
Story of a Pheasant – 雉子のはなし (前編)
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
遠山地区に / 尾州の国の、若い農夫と彼の妻が / 住んでいた / 農場に。
彼らの農場はあった / 寂しい場所に / 丘陵の中の。
ある晩、妻は夢を見た / 彼女の義父の。
彼(義父)は亡くなっていた / 数年前に、しかし今 / 彼は来た / 彼女のところへ / 夢の中で。
彼(義父)は言った、
「明日 / 私は大変な危険にさらされるだろう。
私を救おうとしてくれ / もしあなたにできるなら!」
朝、彼女は話した / 彼女の夫に / その夢について。
彼らの両方は思った / その死んだ人が何かを望んでいるに違いないと、しかし / どちらも理解できなかった / 彼の言葉が何を意味したのか。
朝食後、夫は仕事に行った / 畑に / そして / 妻は留まった / 家に / 機を織るために。
ほどなくして、彼女は驚いた / 聞いて / 人々が叫んでいるのを / 外で。
彼女は戸へ行き / そして / 見た / その地区の領主と猟師の集団が / 近づいてくるのを / 彼らの農場に。
彼女は立っていた / 彼らを見ながら。
突然、一羽の雉が走った / 彼女のそばを / そして / 家の中へ(走って入った)。
その時 / 彼女は思い出した / 夢を / そして / 思った、
「もしかしたら / それは私の亡くなった義父かもしれない。
彼は戻ってきた / 雉として。
私は救おうとしなければならない / それ(雉)を!」
妻は急いで行った / (家の)中に。
その鳥は大きな雄の雉だった / 美しい羽を持つ。
彼女は捕まえた / それ(雉)を / 難なく。
彼女は / それから / それ(雉)を入れた / 空の米びつの中に / そして / 米びつに蓋をした。
しばらくして、何人かが / 領主の家来たちの / 入った。
一人の男が尋ねた、
「お前は雉を見たか?」
彼女は彼の目をまっすぐに見た / そして / 嘘をついた。
(look A right in the eye:Aの目をまっすぐに見る)
「いいえ、私は見ていません。」
しかし / 男たちの中の一人が言った / 彼が見たと / その鳥が走った / 家の中へ。
そこで / 男たちは探した / それを、調べながら / 家のすべての隅を / その鳥を求めて。
しかし / 誰も考えなかった / 見ることについて / その米びつの中を。
~した後 / 至る所を見ること / そして / その鳥が見つからないこと、男たちは判断した / その鳥は逃げたに違いないと / どこかの穴から。
それで / 彼らは全員どこかへ行った。
農夫が帰ってきた時、彼の妻は彼に話した / その雉について。
それ(雉)はまだ隠されていた / 米びつの中に / なぜなら / 彼女は彼に見て欲しかったから / それ(雉)を。
彼女は言った / 彼に、
「私が捕まえた時 / それ(雉)を、それ(雉)はしようとしなかった / 逃げることを / 全く。
そして / それ(雉)はとても静かなままだった / その米びつの中で。
私は本当に思う / この鳥はあなたのお父さんだと。」
農夫はその米びつへ行った、蓋を持ち上げた / そして / その鳥を取り出した。
それ(雉)は静止したままだった / 彼の両手の中で。
それ(雉)はとても落ち着いていた。
その雉はその農夫を見た / まるでそれ(雉)が知っているみたいに / 彼を。
農夫はその鳥を見た / 注意深く。
それ(雉)は盲目だった / 片目が。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
尾州の国の遠山地方に、若い農夫と妻が田畑に住んでいた。彼らの田畑は、山間の寂しい場所にあった。
ある晩、妻は亡くなった舅の夢を見た。舅は数年前に亡くなっていた、だが、夢の中で彼女の元へ来た。舅は言った。
「明日、わしは大変な危険にさらされるだろう。できるなら、助けてもらえぬか。」
朝、妻は夫にその夢について話した。二人とも、死者が何かを望んでいるに違いないと思ったが、彼の言葉が何を意味するのか、二人とも理解できなかった。
朝食後、夫は畑仕事に行き、妻は機織りをするため家に残った。ほどなくして妻は、人々が外で叫んでいるのを聞いて驚いた。彼女は戸口へ行き、領主と猟師の集団が自分たちの畑に近づいてくるのを見た。彼女は彼らを見ながら立っていた。
突然、一羽の雉が、彼女のそばを走って家に入った。その時、彼女は夢を思い出し、思った。
「もしかすると、亡くなったお舅様かもしれない。雉として戻ってこられた。私がお助けしなければ!」
妻は急いで家の中に入った。その鳥は、美しい羽をした大きな雄の雉だった。彼女は、造作なく雉を捕まえた。それから、空の米びつの中に入れ、蓋を被せた。
しばらくして、領主の家来たちが何人か入ってきた。一人の男が尋ねた。
「雉を見なかったか?」
彼女は彼の目をまっすぐ見て、そして嘘をついた。
「いいえ、見ておりません。」
しかし、家来の一人が、鳥が家の中に走っていったのを見た、と言った。そこで男たちは、家の隅々を調べながら、雉を探した。しかし、誰も米びつの中を見ることは考えつかなかった。
家来たちは、至る所を見て、鳥が見つからなかったので、鳥がどこかの穴から逃げたに違いないと判断した。それで、皆は去っていった。
農夫が帰ってくると、妻は夫に雉について話した。雉はまだ米びつの中に隠されていた。夫に見てもらいたかったからである。妻は夫に言った。
「私が雉を捕まえた時、全く逃げようとしませんでした。そして、米びつの中でとても静かなままでした。この鳥は、本当にあなたのお父上だと思います。」
農夫は米びつへ行き、蓋を持ち上げ、鳥を取り出した。鳥は彼の手の中でじっとしたままだった。鳥はとても落ち着いていた。雉は、まるで彼を知っているかのように農夫を見た。農夫はじっくりと鳥を見た。雉は片目が盲目だった。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
“look him right in the eye”
「彼の目をまっすぐ見て」
かっこいい表現ですねぇ。
それにしても家に入ってきた雉が、義理の父親ってわかるのすごいな!
来週どうなるんだ!
See you next Monday!
小泉八雲の書籍
エンジョイ・シンプル・イングリッシュで取り上げられた物語が、収録されている書籍です。
- 日本語版:小泉八雲(著)
- 英語版:Lafcadio Hearn(著)