NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年8月8日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民話
『The Story of O-Kame』
おかめのはなし (後編)
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
It’s Friday!
エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
森崎ウィンです。
毎週金曜日は「小泉八雲が愛した日本の民話」です。
今日は「おかめのはなし」の後編です。
妻おかめの死後、日々衰弱していった夫の八右衞門。
原因は何だったのでしょうか。
ストーリーに出てくる、
“dawn” は「夜明け」
“coffin lid” は「棺のふた」という意味です。
それでは、Let’s listen.
The Story of O-Kame – おかめのはなし (前編)
前編はこちらです。
The Story of O-Kame – おかめのはなし (後編)
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
八右衞門は約束をしていた / 彼の亡き妻、おかめに / 彼は結婚しないと / 再び。
しかし / 日に日に、彼は続けた / どんどん弱ることを / 彼の家族が確信するまで / 彼が死ぬだろうと。
ある日 / 八右衞門の母は尋ねた / 彼に / 彼女の心の底から / 彼女に話すようにと / 本当の理由を / 彼の状態の。
八右衞門は泣いた / そして / 言った、
「母上、あなたは信じさえしないかもしれない / 私を / 私があなたに話す時 / 全てを。
しかし / 実を言うと / おかめは休むことができないのです / あの世で。
(the truth is that:実を言うと~だ)
おそらく / 彼女は決してできないでしょう / 休むことが / 私が行かない限り / 彼女と共に。
というのは、彼女は戻ってきます / そして / 横たわります / 私のそばに / 毎晩。
彼女の葬儀の日以来、彼女は戻ってきています / 何度も。
そして / 時々 / 私は疑問に思います / 彼女が本当に死んでいるのかどうか。
彼女は見えます / そして / 動きます / まるで彼女が生きているかのように。
たったひとつの違いは / 彼女が話すことです / 私に / ひそひそ声だけで。
そして / 彼女はいつも言います / 私に / 私は話すことはできないと / 他の誰にも / 彼女が来ることを。
私は思います / 彼女は私に死んでほしいのだと。
母上、これが真実のすべてです。」
「私の息子よ。
彼女は本当に来るのですか / 毎晩?」
「はい、彼女は来ます / ちょうど私が眠ろうとするときに。
彼女は滞在します / 夜明けまで。
彼女は聞くとすぐに / 寺の鐘を、彼女はどこかへ行きます。」
八右衞門の母はとても心配した。
彼女(母)は急いで行った / 寺に / そして / 依頼した / 僧侶に / 助けを。
老僧は聞いた / 驚きもなく。
彼(僧)は / それから / 言った、
「初めてではありません / 私が聞いたのは / そのようなことを。
私は思います / 私が救えるだろうと / あなたの息子を。
しかし / 彼は大きな危険にさらされています。
もしおかめが戻ってきたら / もう一度、彼は決して見ることができないでしょう / 別の日の出を。
私たちは急がなければいけません。
伝えてください / あなたの家族全員に、あなたの息子を除いて / 来るように / 寺へ / すぐに。
私たちは開けなければなりません / 墓を / おかめの。」
全員が / 八右衞門の親戚の / 集まった / 寺に / そして / 行った / 墓地へ。
おかめの墓は開けられた / そして / 棺の蓋が外された。
全員が驚いた。
おかめはいた / 彼女の棺の中に / 微笑んで / 彼女の顔に。
彼女は見えなかった / 死んで。
彼女の体は / 温かく柔らかくさえあった。
全員の驚きが変わった / 恐怖に。
僧侶は書いた / 聖なる言葉を / 額、胸、腕と脚に / 彼女の体の / 筆で。
彼は行った / 特別な儀式を / おかめの魂のための / そして / 戻した / 彼女の体を / 土へ。
おかめは決して再び / 訪れなかった / 八右衞門を、そして / 彼は徐々に回復した / 彼の健康と体力を。
しかし / 彼がいつも守ったかどうか / 彼の約束を、日本の語り手は言わない。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
八右衞門は亡き妻おかめに約束していた、再婚しないと。だが、日に日に、八右衞門は弱り続けた。家族は、彼が死ぬだろうと確信するまでになった。
ある日、八右衞門の母は心の底から息子に尋ねた、衰弱している本当の理由を話すようにと。
八右衞門は泣いて、言った。
「母上は信じさえしないかもしれません、私が全てをお話ししても。ですが、実を言うと、おかめはあの世で休むことができないのです。おそらく、おかめは決して成仏しないでしょう、私が彼女と一緒に行かない限り。というのも、おかめは、毎晩戻ってきて、私のそばに横たわるのです。葬儀の日以来、何度も戻ってきています。私は時々、彼女が本当に死んでいるのかわからなくなります。彼女はまるで生きているように見えますし、振る舞うのです。ただひとつ違うことは、ささやき声でしか私に話しかけないことです。彼女はいつも言うのです、彼女が来ていることを他の誰にも話してはならぬと。おかめは私に死んで欲しいのだと思います。母上、これが真実のすべてです。」
「我が息子よ。彼女は本当に毎晩来るのですか?」
「はい、私がちょうど眠ろうとすると、おかめが来ます。彼女は夜明けまでいて、寺の鐘を聞くとすぐ、去ります。」
八右衞門の母はとても心配した。彼女は急いで寺へ行き、僧侶に助けを求めた。老僧は驚くこともなく話を聞いた。そして言った。
「そのようなことを聞いたのは初めてではありません。私がご子息を救えると思います。ですが、彼はとても危険な状況にいます。もし、おかめがもう一度戻ってきたら、ご子息は決して、次の日の出を見ることができないでしょう。我々は急がねばなりません。ご子息以外の家族の皆さまに、すぐに寺に来るよう伝えてください。我々はおかめの墓を開けねばなりません。」
八右衞門の親戚全員が寺に集まり、墓地へ行った。
おかめの墓が開けられ、棺の蓋が外された。皆が驚いた。おかめは、微笑んだ顔で棺の中にいたのだ。死んでいるようには見えなかった。おかめの体は、温かく柔らかでもあった。皆の驚きが恐怖へと変わった。
おかめの額、胸、腕、脚に、僧侶は筆で経を書いた。おかめの魂のため特別な儀式を行い、彼女の体を土に戻した。
おかめは二度と八右衞門を訪れることはなかった。八右衞門は徐々に健康と体力を回復した。
しかし、八右衞門がいつも約束を守っていたか、日本の語り手は語っていない。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
おかめさん、八右衞門さんのことが、ほんとに大好きだったんですね、毎晩一緒に寝るって。
好きな気持ちはすごい伝わったんですけど、棺を開けると微笑んでるのはちょっと怖いです(笑)
See you next week!
小泉八雲の書籍
エンジョイ・シンプル・イングリッシュで取り上げられた物語が、収録されている書籍です。
- 日本語版:小泉八雲(著)
- 英語版:Lafcadio Hearn(著)