2022年10月22日に行われた “英語のハノン著者” 横山雅彦先生の講演会に行ってまいりました。
- 横山雅彦先生の経歴
- 2022年10月22日の講演内容
- “英語のハノン”裏話
- “TOEIC”裏話
- 横山先生の印象は?
2022年10月22日 講演会概要
今回伺った講演会は『最強の英語4技能 根幹トレーニング ~英文法を “知っている” から “使える” へ』
横山先生のツイッターで告知がありました。
高校生向け無料公開授業ですが一般聴講も可能ということで申し込んでみたところ、見事抽選に当選し拝聴できました。
場所は、横山先生が教鞭をとっている関西国際大学。
建物の入り口から教室まで何名もの職員さんがご案内してくださり、教室の入り口ではペットボトル飲料としっかりした紙袋にセットされたお土産まで頂戴し、おもてなしがすごい。
席についてお土産の中身を見てみると、大学案内のリーフレットとドリンクポット。
ここでハッとしました。
高校生対象でしかも無料ってことは大学の集客イベントやったんや!
「ドリンクポットのロゴが宣伝感ないから使いやすくてありがたいわ~」とかのんきなことを思ってる場合ではなく、大学受験とはもう縁のない私が参加したことに申し訳なさを感じながら着席して待ちました。
この写真みたいな机とイスの教室で広さは2/3程度。
10分前には席がほぼ埋まり、開始前の注意事項のアナウンスも。(マイクで話してくれたのは、おそらく先生の授業をとっている学生さん)
周りを見渡すと平均年齢は結構高め…見た目は保護者説明会(笑)
英語教師の参加も多かったそうです。
講演が始まってから横山先生からも「今日はハノンのオフ会みたい」とご発言があり、会場もウケました。
横山雅彦先生の経歴
講演の最初に登壇者紹介で読み上げられたご経歴は、本の背表紙でもお見かけした内容でした。
2018年4月より関西国際大学の准教授。「現代社会学部 総合社会学科」で教鞭をとられています。
ここまでは表向きの経歴ですが、講演中に先生がお話しされたご経験も興味深く、お人柄を知れるエピソードでしたので一部をご紹介します。
・若い頃はスコットランド英語発音だった
交際疑惑が出るほど付きっきりで英語を教えてくれていたスコットランド人女性の影響
・その後、研究課題等のためアメリカ英語発音に変更
・2009年 兵庫県に戻ってくる
・2018年 ご両親が相次いでご逝去
・ご両親のご逝去の直後に関西国際大学の勤務が決まる
・何かのご縁と感じ、育ててもらった街に恩返しするつもりで仕事をしている
・関西国際大学には定年まで勤務し、精一杯やっていきたい
・兵庫県に骨をうずめるつもり
宣材用のお写真よりも柔和な雰囲気と穏やかな語り口、とても情愛深いお人柄をお話から感じました。
2022年10月22日 講演内容
講演会のタイトルは『最強の英語4技能 根幹トレーニング ~英文法を “知っている” から “使える” へ』
当初は、受験生向けに共通試験対策の英語学習法の授業をする予定だったそうですが、冒頭で書いた通り参加者はほぼ大人。
ということで、横山先生も予定を変更し、タイトルとは全然違う英語の音の解説を中心としたお話となりました。
英語のハノンきっかけで横山先生の講演を聞いてみたいと集まった英語好きの聴衆に向け、内容のメインはハノンを攻略するための音のとり方のコツ
4技能は段階ではない
日本での英語学習は、文法を習ってから、読む→書く→聞く→話す、の順だが、4技能は段階ではない。
世界中には言語が3,000~6,000あると言われる。その中に文字のない言語は存在するが、speakingがない言語は存在しない。つまりすべての言語にはspeakingがある。
「自分は英語を話す機会がないからspeakingは必要ない」と言う人がいるがそんなことは関係ない。
英語の学習は、speakingつまり音を正面に向けるべきである。
このパートで先生がspeakingを英語発音で言った時「あっ横山先生の英語が聞けた♡」ってなりましたw
英語を音でとらえて最終的には音を超えなければならない
1分間に300word読めるようになればまずまず。500wordまでいければTime誌の最初から最後までが2時間で読める。
1分間300wordが読めるようになるには、音を超えなければできない。
読むではまだ遅い。それ以上の速さが必要と私は理解しました。
(日本語だと、流し読みとか字幕をパッと見ただけで意味がとれるとかのイメージかと)
He was born in 1964. これを「He was born in いちきゅーろくよん」と読んでいませんか?
He was born in nineteen sixty four. パッとこう読めないといけない。
まず、音で英語をとらえないことには音を超えられない。
書いた英語を見たときに、音を知っている人とそうでない人は、文章を見れば分かる。
リズミカルな英語が書ける人は音を知っている。
日本語と英語のリズムの違い
日本語のリズムはsyllable-timedで、英語のリズムはstress-timedである。
例えば、Would you pass me the potatoes?で、
potatoesの子音pやtを、濁音のbやdに変えて、Would you pass me the ボデイドズ?と言っても通じる。
しかし、potateのアクセント位置を変え、ポーテト や ポテトー と言った途端、通じなくなる。
1音1音の発音の正確さも大事だが、全体のリズムやアクセントも重要。
全体のリズムが大事
英語のアクセント位置は大事。アクセントが英語のリズムを決めている。
Cats eat fish. これは3語
The cat ate the fish. これは5語
単語数は違うが、英語のstress-timedの読み方をすれば、この2つの文章のリズムは同じで、同じ秒数内で言い切れる。
日本語のsyllable-timedの読み方「ザ キャット エイト ザ フィッシュ」をどんなに早口にしても「キャッツ イート フィッシュ」と同じリズムにはなり得ない。
ハノンの中級・上級のnaturalの音声についていけないなら、日本語のsyllable-timedで話そうとしているはず。英語のstress-timedで話そうとしなければならない。
演習問題
英語の音の違いや特徴などの解説、リズムの大事さの講義の後、最後は演習問題を。
教材は「発音クリニックからTOEIC®テスト リスニング」の音声を使って。
フリーで聞けます。こちらのtrack2とtrack3です。
音声通りに読めるように、文章をチャンクで分け、flap音や脱落音の解説をしてくださいました。
講演のざっとした要約はこんな感じ。
「THE 英語の授業」だったのは最後の演習問題のパート。学生が多ければこの演習問題の解説がメインだったのではと推察します。
ですが、今回の講演は「ハノンのオフ会」化してしまった参加者に合わせ、講演全体としてはライブとかファンミーティングのような雰囲気で、飽きないようにと余談を多めにはさんでくださいました。
ここからは講演中のこぼれ話を。
英語のハノン裏話
英語のハノンの裏話というかカミングアウトは結構笑いが起きました。
・音声は妥協せず納得するモノを作った
・金額は相当かかった
・中村先生と2人で自腹で負担した
・最初は大手の出版社に断られた
・筑摩書房からやっと出版できた
英語のハノンは今や10万部を超えたそう。
・ハノンの収録中、ネイティブもかんでた
・声を枯らすほど大変だった
オーディオ録音ベテランのネイティブでも、ハノンの音声のポーズ内でおさめるにはむずかしい文章も収録されているとのことです。
TOEIC裏話
TOEIC裏話もお聞きしました。
リスニング問題の音声は、アメリカ英語・カナダ英語・イギリス英語・オーストラリア英語の4種類が出題されますね。
近年では、どの英語の音もアメリカ英語化していっている。
イギリス英語・オーストラリア英語の出題で特徴的なscheduleの発音。TOEIC問題では「セジョール」に聞こえますが、オーストラリア人はもうそんな発音していない。
問題を読むネイティブも無理やり言わされており、ネイティブも嫌がっている。
もうそんなおじいちゃんおばあちゃんみたいな英語は話したくないよ~
読み手のネイティブの本音だそうです。
横山雅彦先生の英語に対する情熱
横山先生が英語学習に妥協をしない姿勢や、英語に対する愛、英語学習者への愛がにじみ出るお話も印象的でした。
ネイティブの音を目指すべき
“通じるからいい”で妥協しないで、我々はネイティブの音を目指すべき。
求めることにロマンがある。
英語と一緒に幸せな人生を過ごしてほしい
『英語と一緒に幸せな人生を過ごしてほしい』
英語が生かしてくれた。
英語に注いだ分は英語が倍で返してくれますから。
と、講演中に何度もおっしゃっておられました。
英語を学習するすべての人を心から応援している、そんな情熱からハノンが生まれたんだなといろいろなお話から感じました。
まとめ
2022年10月22日、関西国際大学で開催された横山雅彦先生の講演内容をご紹介しました。
講演の内容もさることながら「ハノンを作った横山先生に一度会ってみたい」。そんな好奇心もあっての参加でしたが、教育者として英語オタクとしての期待を裏切らない熱い先生でした。
90分間の熱い講演の内容が少しでも伝わればうれしいです。
著書
横山先生の主な著書。
英語のハノン 初級
横山先生が、大学の春学期の授業に使うテキストは「英語のハノン 初級」
TOEIC 100点だった学生が今では800点を超えたそう。
英語のハノン 中級
英語のハノン 上級
横山先生が、大学の秋学期の授業に使うテキストは「英語のハノン 上級」
授業期間の都合上、初・中・上と全部できないので、初級を春学期、中級は飛ばして、秋学期は関係詞メインの上級へ進むそうです。
英語のハノン フレーズ編
2023年3月1日発売
1ユニット=1ダイアログ+5ドリル。これが20ユニット分あります。
英語のハノン イギリス英語版
2023年5月31日発売。「英語のハノン 初級編」の音声をイギリス英語版にしたもの。
音源はnoteでの販売のみ。特設サイトのリンク↓
特設サイトでは、
・解説冊子のダウンロード無料
・視聴音源あり
・音声購入先のリンクあり
今回の講演の前日も音声録音されていたそう。
英国王室でも使われなくなった発音も含む伝統的なイギリス英語発音にこだわって録音した、とお話されていました。
英語のハノン はじめてのハノン
2023年前半予定。
その他の著書(大手予備校で超人気講師だった横山先生の著書は、英語学習者に人気です。)
おまけ:関西国際大学の隣にある日本庭園『相楽園』
今回の講演場所は、横山先生の勤務先である関西国際大学の3号館でした。場所は、神戸のJR元町駅から山の手に15分ほど上がったところ。
大学の向かいには日本庭園『相楽園』があります。
まだ紅葉には早いかと思いましたが、色づき始めていました。
重要文化財 旧ハッサム住宅は、内部も特別公開されていました。
神戸は異人館が有名ですが、築年数も長くなり維持も大変で、閉館したり廃墟になってしまった建物も多いそう。
『相楽園』とても美しいのですが、それほど有名ではないので穴場です。
ちなみに、横山先生は、隣にあるのにまだ一度も中に入ったことがないそうですよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
オンライン英会話QQEnglishのREMSはハノンのエクササイズに似ています。ハノンは気になるけど独学が続かないって人におすすめのレッスンです。私も現在受講中です。
下記の記事でREMSについて解説していますので、気になる方は読んでみてください。