NHKラジオ英語番組『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』
2025年8月22日(金)放送分
小泉八雲が愛した日本の民話
『The Story of a Fly』
蠅のはなし (前編)
全文和訳してみました。
英語学習の参考にしてくださっている方もおられますので、訳し方が異なる2パターンで日本語訳をしました。
- スラッシュリーディング訳
英文を前から訳す
意味はほぼ直訳
テキスト巻末のWord Listの訳を使用しています - 自然な日本語訳
英文を後ろから訳す(返り読み)
意訳を含み日本語らしい文章
森崎ウィンさんのオープニングとエンディングトークも、書き起こししています。
お役に立てれば幸いです。
テキストには英文スクリプトのみ掲載されています。
オープニング 森崎ウィンさんのトーク
It’s Friday!
Enjoy Simple English の森崎ウィンです。
毎週金曜日にお送りするのは「Stories Lafcadio Hearn Collected around Japan」
今日は「蠅のはなし」の前編です。
九兵衞という商人のところに、玉というお手伝いの女の子がいました。
休みの日も、着飾らず、仕事着のままで出かける姿を見た九兵衞は、その理由を尋ねます。
玉は何と語るのでしょうか。
ストーリーに出てくる、
“appearance” は「外見」
“fly” は「蠅」のことですよ。
それでは、Let’s listen to the story together.
The Story of a Fly – 蠅のはなし (前編)
訳し方が異なる2パターンの和訳をしています。
- 放送を聞きながら英語の語順で意味を取りたい場合
→ スラッシュリーディング訳をご覧ください - 物語の全体的内容を理解したい場合
→ 自然な日本語訳バージョンをご覧ください
スラッシュリーディング訳バージョン
英文を前から訳し、意味はほぼ直訳です。
放送を聞きながらや、テキストの英文を読みながら意味が取れるようになっています。
和訳だけを読むと不自然に感じられる部分がありますこと、ご了承くださいませ。
約200年前、住んでいた / 京都に / ある商人が / 飾屋九兵衞という名の。
彼の店は通りにあった / 寺町通と呼ばれる、島原道の少し南の。
彼は雇っていた / 女中を / 玉と呼ばれる / 若狭出身の。
玉は扱われていた / 親切に / 九兵衞と彼の妻に。
彼女も誠に好きだったようだ / 彼ら(夫妻)を。
しかし / 彼女は決して着飾らなかった / 素敵に / 他の少女たちのように。
彼女が休みのときはいつでも、彼女は出かけていた / 彼女の仕事着で / 彼女は与えられていたにもかかわらず / いくつかの綺麗な着物を。
(この文章のwould:習慣)
彼女が働いてきた後 / 九兵衞の元で / 約5年間、彼は尋ねた / 彼女に / ある日、
「なぜお前は決して着飾ろうとしないのか / 素敵に?」
玉は恥ずかしかった / そして / 彼女の顔は変わった / 赤く / 彼女が聞いた時 / この質問を。
彼女は答えた / 丁重に、
「私はとても小さな少女でした / 私の両親が亡くなった時。
私は彼ら(両親)の唯一の子どもでした。
だから、私の責任になりました / 法要を営んでもらうことが / 彼ら(両親)のために。
その時、私は持っていませんでした / 十分なお金を / そうするための。
だから / 私は決意しました / 稼ぐことを / 十分なお金を / 位牌を置かせてもらうために / 寺に / そして / 法要を営んでもらうために / 両親のための。
終わらせるために / この務めを、私は努力してきました / お金を節約することを / 費やさないことによって / それ(お金)を / 着物に。
もしかしたら / 私は努力したのかもしれません / あまりに一生懸命に。
しかし / 私はすでに貯めることができました / 銀100匁を。
私は今 / 終わらせることができます / 私の責任を / 娘として。
これから、私は努めます / より良い服装をしようと / あなたの前で。
ですから / どうかお許しください / 私の過去の外見を。」
九兵衞は感動した / 玉の言葉に。
彼は話した / 優しく / その娘に、
「お前は着飾ればよい / お前が好きなように。
(この文章のcan:許可)
お前はしている / 何か良いことを / お前の両親のために。
お前は良い娘だ。」
まもなくして / この会話の後、玉はできた / 両親の位牌を作ってもらい / そして / 置かせてもらうことが / 寺に / 常楽寺と呼ばれる。
彼女はまた / 特別な供養を行うことができた / 彼女の両親のために。
玉は消費した / 銀70匁を / この2つのことに、そして / 彼女は今 / 30匁あった / 残された / 彼女の貯金から。
彼女は頼んだ / 九兵衞の妻に / 保管することを / その30匁を / 彼女(玉)のために。
しかし / 初めに / その次の冬の、玉は突然 / 病気になった。
彼女は病気だった / しばらくの間、そしてそれから / 彼女は亡くなった / 1月11日に / 元禄15年の。
九兵衞と彼の妻はとても悲しんだ / 玉の死について。
それから / 10日後、一匹のとても大きな蠅が来た / 彼らの家の中に。
自然な日本語訳バージョン
英文を後ろから訳し(返り読み)、意訳も含み日本語らしい文章にしています。
約200年前、京都に飾屋九兵衞という名の商人が住んでいた。店は、島原道の少し南の寺町通という通りにあった。九兵衞には玉という名の女中がいた。玉は若狭の生まれだった。
玉は、九兵衞とその妻に親切に扱われていた。玉も、誠にこの夫婦を好いているようだった。だが、玉は、他の娘たちのように着飾ることは決してなかった。休日になるといつも、仕事着で出かけていた、何枚か美しい着物を与えられていたにもかかわらず。
玉が九兵衞の元で働いてから約五年後、ある日、九兵衞は玉に尋ねた。
「なぜお前は綺麗に装うことをしないのだ?」
玉は、この問いを聞いて、恥ずかしがり、顔が赤くなった。
彼女は恭しく答えた。
「両親が亡くなった時、私は小さな娘でした。私は一人っ子でした。ですから、両親のために法要を営んでもらうことが、私の責任となりました。その時、私にはそうする十分なお金がありませんでした。だから、十分なお金を稼ごうと決意したのです、両親の位牌を寺に置いてもらい、法要を営んでもらうために。この務めを果たすため、私は着物にお金をかけないことで、節約に努めてきました。もしかすると節約しすぎたのかもしれません。しかし、私はすでに銀百匁を貯めることができました。ようやく娘としての責任を果たすことができます。これからは、あなた様の前で、きれいな着物を着るよう努めます。ですから、これまでの私の姿は、どうぞお許しください。」
九兵衞は、玉の言葉に心を打たれた。九兵衞は、玉に優しく話しかけた。
「お前が好きな格好をすればよい。お前は両親のために良いことをしている。良い娘だ。」
この会話の後まもなくして、玉は、両親の位牌を作ってもらい、常楽寺という寺に置いてもらうことができた。また、両親のために特別な供養を行うこともできた。
玉は、この二つのことに銀七十匁を使ったので、今、貯金から残った三十匁が手元にあった。玉は九兵衞の妻に、その三十匁を預かってほしいと頼んだ。
しかし、その次の冬の初め、玉は突然病気になった。彼女はしばらく病であったが、元禄十五年一月十一日に亡くなった。九兵衞と妻は、玉の死をとても悲しんだ。
それから十日後、一匹のとても大きな蠅が、九兵衞の家に入ってきた。
エンディング 森崎ウィンさんのトーク
素敵だぁ。
亡くなった両親の供養を、お寺でしてあげたいって、玉は言ってるんですね。
なんて good daughter なんでしょう。
玉が亡くなった10日後に、大きな蠅が九兵衞の家に来た!?
この蠅って、もしかして…
いや、まさか!
いや、どうなんだろう?
See you next week!
参考リンク
今回の物語に出てきた表現が、森崎ウィンさんの2025年7月号テキスト連載(英語版)でも使われていました。
「恥ずかしかった」
- Tama was embarrassed
- I’m embarrassed
「顔が赤くなった」
- her face turned red
- I went a little red in the face
小泉八雲の書籍
エンジョイ・シンプル・イングリッシュで取り上げられた物語が、収録されている書籍です。
- 日本語版:小泉八雲(著)
- 英語版:Lafcadio Hearn(著)